皆さんこんにちは。THE BARBER CITYの運営者の市長です。
今回は、“フェードカット”について触れていこう。
バーバースタイルの代名詞といえば、やはりフェードカットだろう。
刈り上げにグラデーションを効かせ、肌から髪へと滑らかに繋がるラインは、ただの髪型を超えて、一種の“様式美”とすら言える。
かつて軍人の間で定番だったこのスタイルは、時代とともに洗練され、今やクラシックからストリートまで幅広く支持を集める。
そしてBARBER STYLEを語るうえで、フェードを抜きにすることはできない。
この記事では、フェードとは何か、その種類と特徴、そして理想の一手をオーダーするためのコツまでを、わかりやすく解説する。
もし、君がまだフェードを知らずにいるなら、これが最初の一歩になるだろう。
フェードカットとは何か?
フェードカットとは、髪の長さを下から上へとグラデーション状に変化させていく刈り上げスタイルのことである。
「フェード(fade)」という単語そのものに、“ぼかす”“薄くなる”といった意味があるように、刈り上げのラインが明確ではなく、自然に馴染むように調整されているのが特徴だ。
このスタイルが誕生したのは1940〜50年代のアメリカ軍とされており、当時は規律や清潔感を重視したミリタリースタイルの一環として普及した。向こうでは“GIカット”とも呼ばれている。
無駄を削ぎ落とした機能美とも言えるその見た目は、やがてストリートやヒップホップカルチャーの影響を受け、バーバースタイルとして進化していった。

現代ではスーツスタイルとの相性も良く、ビジネスマンやファッショニスタの間でも支持を集めている。まさに「クラシック」と「現代」の交差点にある髪型、それがフェードカットなのである。
フェードの種類
一口に「フェード」と言っても、そのバリエーションは実に多彩だ。
大きく分けると、フェードは刈り上げの“高さ”によって分類される。最も短い部分で0.3〜0.5mmであり、そこからトップに行くにつれて徐々に濃くなるようにグラデーションさせていく。
主に「ローフェード」「ミッドフェード」「ハイフェード」の3種類に分けられるが、“どこまで肌を出すか””どのようにぼかすか”により「スキンフェード」や「テーパーフェード」などに細分化される。

ローフェード

耳周りやうなじのごく一部だけを薄く刈り上げ、そこから自然にトップへつなげていくスタイル。
ただ刈り上げるだけではなく、刈り上げている部分と肌の境界線がはっきりとしているところが美しい。
最もナチュラルで落ち着いた印象になりやすく、クラシックな七三やサイドパートとの相性も抜群。ビジネスシーンでも違和感がないため、初めてフェードに挑戦する人にもおすすめだ。
ミッドフェード

フェードの高さをサイドの中段あたりに設定したスタイル。ローフェードよりもコントラストがはっきりし、フェードらしいシャープさを楽しめる。
ローフェードでは物足りないが、ハイフェードやスキンフェードでは攻めすぎると感じる人には最適だろう。
トップにボリュームを出せばワイルドな雰囲気に、タイトにまとめればエレガントにも見せられる。個性とバランスを両立した万能型といえる。
個人的にはスリックバックやサイドパートとの組み合わせがたまらない。
ハイフェード

かなり高い位置まで刈り上げを入れる、攻めたスタイル。サイドを大きく削ることで、トップの存在感が際立つ。
その分、顔まわりの骨格やシルエットに影響を受けやすいため、事前に理容師や美容師と相談が必要だ。
また、ローフェードやミディアムフェードと比較し、個性は出るものの雰囲気が”いかつく“なる。そのため、銀行員やホテルマン、教員、医療従事者等の、親しみやすさや柔らかさが求められる職業の人は、上司や周りから一言言われないか注意が必要だ。
似合えば唯一無二の色気を出すことができる。
スキンフェード(BALDフェード)

肌がしっかり見えるレベルまで、刈り上げを0mmに近づけたスタイル。
どの高さのフェードとも組み合わせが可能で、「ロースキンフェード」「ハイスキンフェード」などのバリエーションがある。潔さと清潔感を求めるなら、これほどハマる選択肢はない。
先述のハイフェード同様、より強い印象を与えやすい。(筆者も初めてスキンフェードにした際は、家族や周囲から多少驚かれた。しかし、それも次第に慣れていったようだ。自分のスタイルにしてしまえばこっちのものだ。)
なお、“BALDフェード”はスキンフェードとほぼ同義で、より攻めた印象を与えることが多い。
テーパーフェード

フェードの中でも最も控えめで、自然な刈り上げに近いスタイル。襟足やもみあげだけをぼかし、トップへはほぼつなげない。
ローフェードとの区別が難しいが、耳やもみあげ部分の刈り上げの有無で区別できる。
カジュアルにもフォーマルにも溶け込むため、クラシックな理容技術の中でもとりわけ“粋”を感じるデザインだ。
スキンフェードやハイフェードのように、刈り上げる高さを出さなくてもキマるのがフェードスタイルの魅力でもある。
ドロップフェード

横一直線ではなく、耳の後ろに向かってフェードのラインが“落ちていく”ようにデザインされたスタイル。
頭の丸みに沿って立体的にグラデーションをつけることで、よりシャープでスマートな印象に仕上がる。
長さ的にはミディアムフェードをイメージすると良いだろう。スキンフェードやハイフェードまで行かずとも、個性を出したい人にはおすすめのスタイルである。
シャドーフェード

スキンフェードのように肌を露出させず、濃淡のコントラストだけでフェードを表現するスタイル。
「ぼかしの美学」とも言える技術で、グラデーションがより柔らかく自然に見える。
落ち着いた印象にしたい人や、肌を見せたくない人にも人気が高い。
ブラストフェード

側頭部や後頭部の一部を中心に、放射状にグラデーションを入れる独特なスタイル。モヒカンやカールヘアと合わせることも多く、個性を主張したいときにハマる。
あくまでバーバースタイルの“外縁”に近いが、ストリートやアーバンカルチャーとの親和性が高い点も面白い。
フェードカットは元々ヒップホップシーンで人気を博したスタイルでもあり、その名残をうかがい知ることができる。
さて、幾つかのフェードカットを紹介してきたが、皆さんの琴線に触れるスタイルは見つかっただろうか?
今回はフェードをわかりやすく説明するために明確にスタイルを分類したが、実際のところはカットする人の解釈や理解によるところが大きい。
例えば、ある人はミディアムフェードと捉えているが、他の人はローフェードと捉えるかもしれない。
大切なのは、自分の顔立ちや髪質、ファッション、そしてライフスタイルにどのスタイルがマッチするかを見極めることである。
バーバーでフェードをオーダーする際は、「高さ」だけでなく、「肌の露出具合」や「ラインの形状」、「フェードのコントラスト」などを意識すると、自分らしいスタイルにぐっと近づく。
実際にフェードカットをしてみて初めて気づく点もあるため、気になる人はまずは一度tryしてみてほしい。
どこかで腕の良いバーバーの選び方についても発信していければと思う。
フェードの魅力と注意点
フェードの種類について紹介したところで、段々とその魅力に気づいてきた人もいるのではなかろうか。
だが、フェードカットを取り入れていく中でも、注意するべき点が存在する。
どんな物事にも表裏がある。あまり言及されない、フェードカットの注意点についてもお伝えしよう。
注意点
メンテナンスの頻度
フェードはグラデーションが命。ほんの数ミリ伸びるだけで印象が崩れるため、理想をキープするなら2〜3週間ごとのカットが必要だ。
1回のカットでは数千円の出費となる。その点は十分に理解しておくべきだろう。
また、忙しいライフスタイルの中で定期的にバーバーへ通えるかどうかも検討材料になる。単に髪を切るだけであれば、近くの1000円カット(今は1300円くらいするが)で住むだろうが、そこで理想とするフェードカットを享受することは中々難しい。
だが、逆に考えれば、カットに行くことを仕事や日々のモチベーションにするというのも悪くない考え方だ。
カットが終わってから店を出るときのあの爽快感は、なんとも言い難い。定期的に身だしなみを整えることで、身も心も引き締めよう。
スタイリングの習熟
フェードスタイルはトップとのバランスで決まる。オールバックやポンパドールにするなら、ドライヤーとポマード、コームを使いこなす最低限のスタイリングの技術が求められる。
とはいえ、日々のセットもまた“バーバースタイルの楽しみの一部。髪の毛を整えると、必然と眉毛やヒゲ、服装にも気を使いたくなる。
朝の身支度に気合いを入れるだけで、自然と姿勢も所作も整ってくるから面白い。
そこから自分の気に入ったコスメや整髪料、ツールを見つけていくことを楽しんでもらいたいものだ。
信頼できるバーバー・美容院
骨格・髪質・ライフスタイルによって、似合うフェードの高さやグラデーションの強さは大きく異なる。憧れのスタイル写真をそのまま再現しても、どこかしっくりこない…ということは珍しくない。(私はいくら髪をキメてもブラッド・ピットやデビット・ベッカムになれないのと同じ様に)
ここで頼れるのが、信頼できる理容師や美容師の存在だ。フェードカットは数mmの世界であり、当然それだけの技術が必要になる。
ふらっと入った近くのバーバーや美容院で、自分の理想とするスタイルに出会える確率はそう高くないだろう。
私もかれこれ15年来の付き合いの美容師さんにカットをお願いしているが、今更他の人にお願いしようと言う気にはならない。
自分の髪を託すのにふさわしいパートナーと出会えれば、自分にフィットする“唯一のフェード”も見つかるはずだ。
どうやってフェードを選ぶか
次に大切なのが、「フェード=刈り上げではない」ということを理解していただいたところで、どうやって自分に合うフェードを見つけていくかだ。
どの高さで入れるか、どんなグラデーションでつなげるか、トップの長さとどう調和させるか。そこには、髪型を通して“自分をどう見せたいか”という意志が反映される。
その選択には、年齢、職業、ライフスタイル、さらにはその時時々の“気分”さえも映し出される。
若々しくエネルギッシュに見せたいからハイフェードにするのか、ローフェードの落ち着いた印象で相手の信頼感を勝ち取りたいのか、ドロップフェードで個性的な自分を演出したいのか。
だからこそ、フェードを楽しむということは、「自分を整える」ことであり、「自分を表現する」ことでもあるということを認識していただきたい。
フェードを選ぶとは、自分のスタイルを決めるということ。
その選択に、年齢もトレンドも関係ない。
必要なのはただ、みなさんが「どう在りたいか」である。
まとめ
フェードが世界中で愛される理由。それは「清潔感」と「造形美」の両立にある。
刈り上げた部分から自然につながるグラデーションは、まさに技術力が問われる領域。輪郭が引き締まり、顔立ちが立体的に見えるため、誰が取り入れても“ひと皮むけた印象”になる。
さらに、フェードは年齢を問わない。
若年層にはストリート感とフレッシュさを、大人世代には精悍さとダンディズムを。それぞれの年齢に応じた魅力を引き出す万能性がある。
フェードカットとは、貴方の魅力を最大化させる最高の道具の一つなのだ。
今回のまとめ
- フェードとは、髪の長さを下から上へとグラデーション状に変化させていく刈り上げスタイル
- フェードには多彩なバリエーションがある。
- フェードスタイルの注意点は、定期的なメンテナンスをすること、スタイルに習熟すること、信頼できるバーバー・美容院を探すこと
- フェードを選ぶことは、自分の在りたい姿の表現である
【Mayor’s comment〜市長のひと言〜】
どんなフェードを選ぶか。それは、自分の輪郭や髪質以上に、自分の“スタンス”を問う行為だ。
男らしさやクラシックさ、清潔感を保ちつつ、今の気分を表現できる。そんな“バーバースタイル”は、年齢や時代に関係なく、すべての男に開かれている。